くも膜下出血“遺伝”の影響こう克服する

「落ち着いたら、必ず脳ドックを受けておくんだぞ」
 Kさんは、3年前、母親をくも膜下出血で亡くした。葬儀が終わり、親戚やごく親しい友人が帰り、ほっと一息ついたところで父親にそう言われた。そのときは、まだ29歳。「脳ドック」という言葉がピンとこなかったという。
「実は、母方の家系は、皆、ことごとくくも膜下出血で亡くなっているそうなのです。母は脳の動脈の一部が異常に細いのが原因でした。僕が生まれる前に亡くなった叔母も祖父も、死因が母と同じだったので、父は僕の将来を心配して、脳ドックを受けるように勧めたのです」
 がんも“遺伝病”として語られることがよくあるが、くも膜下出血も遺伝的な影響が強い病気のひとつだ。がんと大きく違うのは、発症から死までの短さだろう。がんは、見つかったときにたとえ末期でも、即死することはまれだ。しかし、くも膜下出血は、発症したら少なくとも40%がそのまま死亡するとされる。
 くも膜下出血の遺伝が少しでも考えられる人は、病気を放置してはマズイのだ。では、どうすれば遺伝の影響を克服できるのか。「東京脳神経センター」の松井孝嘉理事長に聞いた。
「Kさんのように脳の動脈や静脈の奇形が疑われる方は、症状のあるなしに関係なく、すぐに脳ドックを受けて血管の状態をチェックしておくべきです」

●まずは造影剤を使うCT検査だ
 脳ドックで奇形がなければ一安心というわけでもない。
「脳ドックはMR検査で血管を調べますが、それだと造影剤を使わないので、末梢の細い血管の異常が見落とされることがあるのです。通常は、MR検査で何らかの異常が見つかり、より詳しく調べるために、造影剤を使うCT検査を行うのが一般的。しかし、遺伝的な影響が強い方は、最初からこの検査を受けることも考えた方がいいでしょう」
 くも膜下出血を起こしそうなサイズの未破裂脳動脈瘤(りゅう)や、血管の奇形などの異常が見つかったときは、治療だが……。
「未破裂脳動脈瘤については、議論が分かれていて、5ミリ未満のものは治療せず、経過観察ということもあります。治療法によって破裂を生じるリスクがあるためです。奇形については、その形状によって、摘出術や塞栓術などが選ばれます」
 血圧対策も欠かせないという。
「くも膜下出血が発症するのは、何らかのきっかけで上昇した血圧の力に負けて脳の血管にできた脳動脈瘤が破裂したり、まれに脳の血管が破れるときです。いずれにしても血圧上昇がきっかけですから、高血圧の方は、血圧のベースラインをしっかりと下げておくことです」
 今のところ、血圧が正常な人でも、ストレスや喫煙、飲酒などの影響で一時的に血圧が上がることがある。そんなリスクの芽は、摘んでおくことが大切だという。


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